ジョン・アトキン・グリムショー/シャーロットの乙女
この作品はテニスンの同名の名高い詩にもとに描かれていて、グリムショーには珍しく文学的な題材が扱われています。シャーロットの乙女はいましも運命的な最期の旅路を辿ってゆくところです。
雪のごとく白き衣緩やかに翻らせ
横たわむれるかの乙女
身に降りかかる落ち葉も軽やかに
夜の静寂をつらぬいて
キャメロットの地めざし、流れゆく
この詩はラファエル前派に非常に好まれました。1857 年に出版された有名なモクソン版「テニスン詩集」に収められている「シャーロットの乙女」に挿絵を入れたのは、ロセッティとホルマン・ハントであったし、バーン=ジョン―ズやアーサー・ヒューズ、J・W・ウォーターハウスもこの主題を試みています。
グリムショーの初期の作品はラファエル前派の影響を非常に強く受けていて、彼自身熱烈なテニスン崇拝者でした。これは彼が自分の子供たちの名前にテニスンの「国王牧歌」中の登場人物に因んでつけていることからも推察できます。
しかし、彼が月の光に照らされた街並みや波止場の情景を描く際頻繁に用いた視覚効果の面からこの絵を見ると、彼がこのテーマを驚くほど独創的に扱っていることが分かります。なお背景の異なるもう一点のバージョンが残されているのでそれもあわせて載せました。
これまでアップしたラファエル前派の画家とその時代の画家の作品の一覧
ウォーター ハウス/春の歌
アーサー・ヒューズ 「4月の愛
聖女ユーラリア/ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス
エドワード・バーン=ジョーンズ/フィデス(信頼)
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ/マリアーナ
ジョージ・フレデリック・ワッツ/希望
「夏過ぎて・・・・・」/ジョン・メリッシュ・ストラドウィック
フレデリック レイトン/燃え立つ6月/燃える6月/燃え上がる6月
イーヴリン・モーガン/フローラ
ロレンス・アルマ=タデマ/春の祭典
ジョン エヴァット ミレイ/りんごの花(春