サー・ローレンス・アルマ=タデマ 「期待」
ある批評家がこの典型的なアルマ=タデマの絵に触れて「サファイア色の海と白い波頭と蒼い空と甘い香りの花々」で構成されていると評したことがありますが、それに続けて「恋人の姿を夢見ながらエクセドラに腰掛けた娘」と付け加えていたとしても不思議ではないと言えます。
最後の25年間、彼の作品にはそうした基本的な構成要素が繰り返し登場することとなります。通常このような作品は、ナポリ湾で描かれましたが、この地で彼はしばし中景を省くために場面を断崖の突端に設定しました。こうすることによって大理石の白さと背景の空や海の蒼さがくっきりとした対象をみせることになるからです。
エクセドラの描く硬い線はーこの絵のハナズオウのようにーしばしば見事な花をつけた樹木によって中断され、和らげられています。
傍らの娘は、恋人を乗せた船がやってくるのを待ちながら、陽の光に照り映える海の彼方を見つめています。
この作品は、1889年のパリ国際博覧会で金賞を受賞しました。
参考文献
「サー・ローレンス・アルマ=タデマ画集」トレヴィル出版